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AIHOW公開セミナー2026 レポート

風力発電データ利活用推進セミナー
-安全な風力発電運用を目指して-

2026年7月24日、東京大学先端科学技術研究センターENEOSホールにて、AIHOW公開セミナー2026「風力発電データ利活用推進セミナー -安全な風力発電運用を目指して-」(主催:東京大学先端科学技術研究センター 附属洋上風力開発推進施設(AIHOW)、共催:中部大学/産業技術総合研究所人工知能研究センター/早稲田大学グリーンコンピューティングシステム研究機構)を開催いたしました。

セミナー会場の様子
写真:セミナー会場(撮影:AIHOW)

当日は産官学から95名の皆様にご参加いただき、「データを高度に利活用する風車保守メンテナンス技術の研究開発」をテーマに、AIHOWの活動紹介、基調講演、3件の研究発表、関連研究のポスター展示を行いました。風力発電の安全性と経済性を両立するために、データをどのように収集・活用し、保守・診断・意思決定へつなげていくかについて、多角的な議論が交わされました。


福岡功慶様よりご挨拶
写真:福岡功慶様よりご挨拶(撮影:AIHOW)

福岡功慶様(資源エネルギー庁・風力事業推進室長)より
ご挨拶

はじめに、福岡功慶様(資源エネルギー庁・風力事業推進室長)よりご挨拶をいただきました。産業政策のかじ取りを担うお立場から、再生可能エネルギーの導入拡大と主力電源化の切り札として洋上風力を位置づけるとともに、安全性(Safety)を大前提として、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)、安定供給(Energy Security)を同時に実現するS+3Eの考え方に則り、日本のエネルギー政策を推進していく方針が示されました。

また、風力発電産業は非常に裾野が広く、克服すべき課題も多岐にわたることから、洋上風力を持続的な産業として育成していくためには産官学の連携が不可欠であるとのお話がありました。とりわけ、安全性を確保しながらデータ利活用を進め、保守・運用コストの低減につなげていくことの重要性が強調されました。


飯田誠氏(東京大学)
「AIHOWの活動紹介と風力発電O&M産学連携
データ利活用プラットフォーム」

続いて、飯田誠氏(東京大学)から、AIHOWの概要および活動内容の紹介と、東京大学を中心に進めている「風力発電O&M産学連携データ利活用プラットフォーム」に関する研究開発の状況について報告がありました。あわせて、2026年1月から3月に実施した風力発電業界における保守メンテナンス実態調査の結果が報告され、現場における課題やデータ利活用への期待が共有されました。

飯田誠氏による報告
写真:研究開発の状況について(撮影:AIHOW)

基調講演:中垣隆雄先生(早稲田大学/東京科学大学)
「再生可能エネルギー主力化時代における電気保安分野のスマート化にかかる動向」

基調講演では、中垣隆雄先生(早稲田大学/東京科学大学)より「再生可能エネルギー主力化時代における電気保安分野のスマート化にかかる動向」と題してご講演いただきました。再生可能エネルギーの主力電源化が進む中で、電気保安分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が一層高まっていることが示されました。特に、労働力不足や設備の高経年化といった課題に対応するため、従来の時間基準保全(TBM)から、設備の状態に応じて保全を行う状態基準保全(CBM)に移行していく必要性について、具体的な事例を交えてご紹介いただきました。さらに、ドローン、AI、IoT等を活用した「スマート保安アクションプラン」や、NITEによる「スマート保安技術カタログ」を通じた新技術の普及・社会実装の動向についても紹介があり、今後の電気保安の高度化に向けた方向性が示されました。

中垣隆雄先生による基調講演
写真:基調講演(撮影:AIHOW)

小川哲司氏(早稲田大学)
「風車異常検知から故障診断へ:実運用に向けた課題と取り組み」

続いて、AIHOWのメンバーによる研究発表が行われました。小川哲司氏(早稲田大学)は、「風車異常検知から故障診断へ:実運用に向けた課題と取り組み」と題し、振動データを用いた風車の異常検知技術と、損傷レベルの推定を含む、より高度な故障診断技術の研究開発について紹介しました。発表では、シミュレーションデータで学習した診断モデルを実機データへ適用する際に生じるデータ分布の差異に対し、正常状態を基準とする差分特徴の抽出や分布構造に関する制約を導入する手法が示されました。これにより、シミュレーションデータと実機データのギャップを抑え、実機に対する故障診断性能を向上できることが報告されました。また、知識を大規模言語モデルとして蓄え、対話を通じて必要な知識を引き出すアプローチも紹介されました。異常の検知にとどまらず、損傷状態の理解や保守判断の支援へと技術を発展させる、実運用を見据えた取り組みとして注目される内容でした。

小川哲司氏による研究発表
写真:研究発表(撮影:AIHOW)

深山覚氏(産業技術総合研究所)
「風車状態監視WebシステムWindCastle」

深山覚氏(産業技術総合研究所)は、「風車状態監視WebシステムWindCastle」と題し、異常検知技術を誰もが現場で使いこなせることを目的として、産総研を中心に開発したWebシステム「WindCastle」を紹介しました。「WindCastle」は、異常度の可視化や振動波形の表示に加え、振動データを音に変換して検証する機能を備えています。また、部品交換などによって現場環境や設備状態が変化した場合にも柔軟に対応できるよう、ユーザーが正常学習期間を指定したり、設備に関するイベントを登録できる仕組みが構築されています。異常検知モデルそのものの精度だけでなく、現場で継続的に運用・更新できるシステムとしての実用性を重視した取り組みが紹介されました。

深山覚氏による研究発表
写真:研究発表(撮影:AIHOW)

山本和男氏(中部大学)
「風車雷被害撲滅に向けた取り組み」

最後に、山本和男氏(中部大学)は、「風車雷被害撲滅に向けた取り組み」と題し、風力発電設備の雷被害の現状と、その低減に向けた取組みについて報告しました。発表では、風力発電の保険事故の約50%を雷被害が占める現状が紹介されるとともに、雷被害を撲滅するためには、冬季雷と夏季雷の違いや、風車の雷保護システム(LPS)の特性を正しく理解し、JIS規格に基づいた適切なリスクマネジメントを行うことが重要であると説明されました。また、落雷後に迅速な停止・点検を行うことで被害の深刻化を防ぐことに加え、風力発電メーカー、事業者、金融機関をはじめとする関係者が連携し、リスク評価から対策までを一体的に進める必要性についても指摘がありました。

山本和男氏による研究発表
写真:研究発表(撮影:AIHOW)

ポスター展示とアンケート

当日は、関連する研究成果のポスター展示も行われ、講演・研究発表の内容について、参加者と研究者との間で活発な意見交換が行われました。また、事後アンケートでは、現在現場で直面している実務上の課題や、学術機関に期待する技術・研究開発などについて、多くのご意見をお寄せいただきました。

AIHOWでは今後も、カーボンニュートラル実現に向けた重要な電源として期待される風力発電、特に今後さらなる導入拡大が見込まれる洋上風力発電を対象に、データ利活用に基づく風車保守・メンテナンス技術の研究開発を推進してまいります。さらに、公開セミナーの開催や共同研究などを通じて、産官学の皆様との連携を一層深め、現場の課題と研究開発をつなぎながら、得られた成果の社会実装と普及に取り組んでまいります。